1610年代に日本初の磁器が有田で焼かれ、その半世紀後に中国から赤絵(色絵)技法がもたらされてから、400年にわたり有田磁器の絵付け技術を継承・発展させてきた「今泉今右衛門」家。十四代・今泉今右衛門先生は、「色鍋島」の卓越した技術と品格を今に伝え、「現代の色鍋島」として伝統技法に現代性をくわえた作品を創り続けています。
十四代 今泉今右衛門先生の作品の特徴
十四代 今泉今右衛門先生からメッセージ
江戸期・色鍋島の伝統を継承し、墨はじき・薄墨(吹墨)・プラチナ彩を取り入れ、特に絶妙な白の雪花墨はじきはオリジナル技法です。自分の作品は有田の400年の技術と人の支えの積み重ねのお陰で生まれる仕事だと思っています。素直な目で、「綺麗だなあ」とか「引き込まれるなあ」とか「好きだなあ」とか、感性で見て楽しんでいただきたいです。するとさらに別の深い美意識も生まれてくると思います。
鍋島焼・色鍋島とは
17世紀頃から19世紀にかけて、佐賀・鍋島藩の献上品専用の御用窯で作られた高級磁器が「鍋島」焼や「色鍋島」といわれます。
優秀な陶工を囲い込み、徹底的な秘密保持の下で作られた鍋島焼は、日本磁器最高峰の品質に達したと伝えられています。デザインについては、一般に出回ることのない「献上品」の性質上、大名文化の生活様式を反映して旧暦の季節行事などをモチーフにしたものが多くみられます。藩窯は幕藩体制の終焉とともに歴史を閉じましたが、「色鍋島」の技法・伝統は今泉今右衛門家によって継承されており、現在では重要無形文化財に指定されています。(参考:文化庁・日本遺産ポータルサイト)
色鍋島の鑑賞ポイント
一、青みを帯びた釉薬と、涼やかで高雅な意匠
色鍋島の特徴は、青みを帯びた透明感のある釉薬にあります。これは「柞灰(いすばい)釉」と呼ばれるもので、作品全体にやわらかな青みを与え、気品ある印象を生み出します。この釉薬の上に、染付の青、そして赤・黄・緑などの上絵が重ねられ、草花文様が描かれます。色彩の調和と構図の美しさが際立ち、色鍋島ならではの華やかさと洗練が感じられます。
二、大名道具としての文様(モチーフ)の格調・由来
元禄期に五代将軍・徳川綱吉による大名屋敷の訪問が盛んに行われた影響で、主に将軍の食器として生産されたと考えられている色鍋島。そのため、モチーフには季節感と祝福感が織り込まれています。たとえば、桃や芙蓉など中国故事・日本故事に因んだ花や果実、桜や藤袴など季節の植物、普遍的な美を表現する「唐花文(現実の花と想像上の花を組み合わせた華やかな文様。インドやペルシアなどの影響を受け中国で誕生)」、「有職文様(公家・武家社会で用いられた伝統的文様)」など、文様の背景や物語性もお楽しみいただけます。
三、各工程の技術・精度の高さ
色鍋島制作は、ろくろによる成形から染付、釉掛け、焼成、赤絵付までおよそ15の工程を経て完成します。それぞれの工程が、藩窯時代に使われていた磁土・釉薬・絵具・技術に忠実に、専門の職人によって分業で行われ、精度の高い手仕事の積み重ねが色鍋島特有の風格と品格を生み出します。
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