小宮 康正先生からメッセージ
江戸小紋は江戸時代に武家の式服、裃などに用いられた、一枚板に貼られた絹の白生地を型紙で染める技法です。私、康正は康助【こうすけ】、康孝【やすたか】と3代にわたり江戸小紋の保持者に認定されました。精緻な単位模様を一色で染め出した菊格子、雨間、筋三筋は一見すると無地に見えますが、近づくとその美麗さに気づいていただけると思います。長年の経験と技で始めて完成する仕事です。
染織作家 小宮 康正(重要無形文化財「江戸小紋」保持者)について
出典:「世界に誇る物語ちゃんねる」公式YouTube/江戸の粋を今に伝える「人間国宝(江戸小紋) 小宮康正先生」編
小宮康正先生の作品の特徴
三代目・康正先生の代表的な技のひとつは、超精緻な「連子柄」です。連子とは格子を指します。 一寸(約3センチメートル)幅に40本以上の縦縞を刻むこの柄は、毛髪一本分のずれも許されない精度が求められ、型紙師と染め師の双方に卓越した技術があってはじめて完成します。
康正先生は、長さ約6.5メートルのモミの一枚板に生地を張り、生地の表裏に防染糊を置いて藍で染め上げる「長板中板(ながいたちゅういた)」という伝統技法も本格継承しています。その技術を応用して、本来片面染めが一般的な江戸小紋において両面染めに挑み、「江戸小紋の両面染」という最高難度の作品を実現しました。技術の要となる防染糊(模様を白く残すための、染料をはじく糊)は、生地の吸水性・繊維の空間・気候条件まで考慮して配合を調整されているとのこと。従来の片面染め中心の小紋柄の常道を一段押し広げた“ブレークスルー”が康正先生の作品の特徴といえるでしょう。2018年には、康正先生も重要無形文化財「江戸小紋」保持者に認定されました。現在は、次世代への技術承継とともに養蚕など素材面の研究にも力を注いでいらっしゃいます。
初代・康助氏、二代・康孝氏に続く三代連続の「人間国宝」認定は、まるで一人の人間が生き続けているかのように、伝統技術が改良と進化を加えられながら現在へ受け継がれていることを物語っています。小宮家の作品は、端正な文様と澄んだ色調が織りなす穏やかな風合いで、人々の心を惹きつけてやみません。
➤第72回日本伝統工芸展では、「両面染めの絽の小紋」が出品されました。 夏物の生地「絽」は通気性を確保するために隙間があり、そこに染めを均一に入れるにはきわめて高度な技術が必要です。透け感のある布地に浮かぶ緻密な文様に目を奪われます。




