連載をはじめます ──「日本工芸は、海外でどう読まれるか」。
kintsugi,wabi-sabi,urushi。 いま、「工芸」を表す言葉は、国境を越えて遠くまで旅をしています。壊れたものを受け入れる哲学として、あるいは不完全さの美学として。世界の人々がこれらの言葉を語り、自らの生き方に重ね合わせる風景は珍しくありません。
私たちは今回、海外のSNS上に溢れる工芸をめぐる約8万件のテキストデータを抽出・分析しました。膨大なデータベースを紐解くなかで浮かび上がってきたのは、概念的な賛辞の裏側にある、もう一つの確かな声。
「実際に手にして、はじめてわかることがある」
漆の柔らかな艶に目を奪われた人。本物の金継ぎと、エポキシ樹脂による金継ぎ"風"の決定的な違いに気づいた人。藍の色が時とともに深まっていく経年変化を知った人。
海外の受け手たちのリアルな言葉を手がかりに、概念として消費される工芸を、全11回にわたり静かに見つめ直していきます。
第1回は「手にして、はじめてわかること」。 最も成功した工芸の入口である、一本の「漆塗りの万年筆」をめぐる対話から始めます。
世界の視線を通じて、日本の工芸を新たな角度から見つめ直す時間に、どうぞお付き合いください。