
工芸を観る眼について ―
人の顔や姿は、大まかには似ているようでいて凡てが異なっているように、工芸作品もまた共通する技法や形式をもちながら、それぞれに特徴を宿しています。それは作家の個性が異なるからです。
たとえば同じ陶芸の茶碗でも、「端正に仕上げたい」と思う人もいれば、「野趣を残したい」と思う人もいます。その結果、形の歪みや釉薬の流れといった差異が、その人らしさとして表面に現れてくるのです。重要なのは、作品がただ「上手いか下手か」で測られるものではなく、作家がもつ個有の特徴がそこに表出しているということです。
しかし、鑑賞する側も最初からそれを見抜けるわけではありません。はじめは単に「なぜか美しく感じる」「面白い」「心地よい」といった感覚にとどまるかもしれません。なお、「好きな部分」はご自身と似ていると捉えるとよいでしょう。だからこそ多くの作品に触れ、名工の手によるものを観、時には自分の好みと異なる作風に身をさらすことが大切です。多種多様な作品を鏡とすることで、自分自身の感覚の特徴に気づけるようになるのです。
工芸の鑑賞は、単に好き嫌いを区別するのではなく、その移ろいを経験することに意味があります。当初は苦手だったものに後年深い味わいを感じたり、かつて心を奪われた華やかさに飽きを覚えたりすることもあるでしょう。その変化こそが、私たち自身の美意識の成長を示しています。
優れた作品を観続けると、おのずと美に対する感覚が研ぎ澄まされていきます。やがてそれは工芸にとどまらず、日々の暮らしで出会うあらゆる美に対する感性へと育っていくことでしょう。