蒸し暑い夏が訪れました。昔から、日本人は五感を駆使して「涼」を求める工夫を凝らしてきました。古典文学の徒然草にも、「夏をもって旨とすべし」と記されているように、日本人は昔から、夏を快適に過ごすためにさまざまな工夫をしてきたのです。
その一例が風鈴です。風が吹くたびに鳴る澄んだ音色が耳に心地よく響き、風の存在を意識させてくれます。また、風鈴のガラスは光を通し、視覚的に清涼感をもたらします。冷凍技術がなく氷が高級品だった江戸時代の人々は、透明でひんやりとしたガラスから氷を連想し、涼を感じていたのでしょう。
白色もまた、夏に涼を感じる要素の一つです。白は光を反射し、熱をあまり吸収しません。そのため、白い物を見ると自然に「涼しそう」と感じることができます。
ここでは、ガラスを用いた工芸品や、波をモチーフにした白色の工芸品をいくつかご紹介します。視覚から涼を取り入れ、この暑い夏を乗り切っていきましょう。
~渡邊 明先生からみなさまへ~
板ガラス2枚で純金粉を挟み、鉢の形に加熱成形した後に切子で仕上げました。内面にもカットをすることで金線が揺らいで見え、外面はマットに仕上げることでやわらかい光を現わし、金線も際立ちます。
~氣賀澤 雅人先生からみなさまへ~
ガラスの魅力は光の反射と映り込みです。きらきらと輝く宝石を散りばめたような豪華さが見どころです。
~六代 伊藤 赤水先生からみなさまへ~
水の流れと波をイメージしています。形が紋様の邪魔をしないように、紋様が形の邪魔をしないように、形と紋様が一体となっている作品です。
~井上 萬二先生からみなさまへ~
鳴門の渦をモチーフにして作成した作品です。一分のくるいもなくロクロで成形し、その後表面から渦を彫り出します。とても時間と技術が必要とされる作品です。