
「伝統工芸」の現在地──文化と資産の交差点に立つ
近年、アート市場が脚光を浴びているようです。ある調査では、2024年の世界のアート市場規模が約8.4兆円に達したとも。日本市場もまた、その一部として静かに伸びつつあるといいます。
日経新聞の報道*によれば、インフレ傾向を背景に、欧米を中心としたアート市場が再び脚光を浴びる中、日本国内でも三井住友・三菱UFJ・みずほといった大手金融機関が、現代アートだけでなく「伝統工芸」の支援や展示に積極的に取り組み始めているそうです。とりわけ三菱UFJ銀行は、人間国宝や若手作家による工芸作品の展示を通じて、工芸の可能性を文化・産業の両面から捉え直すプロジェクトを展開しています。
このような動きは、これまで“実用品”として扱われがちだった伝統工芸に、「芸術性」や「資産性」という新たなまなざしが注がれつつあることの表れかもしれません。
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日本の工芸作品は、長らく「用の美」に重きを置き、作品に込められた文化的背景や芸術性といった“付加価値”を市場価格に反映させようとしなかった奥ゆかしい側面があります。 しかし、工芸もまた、現代アートと同様に創造の営みであり、作家の想いを反映し、脈々と受け継がれてきた技巧を宿す唯一無二の作品であることに変わりはありません。いま目の前にある工芸作品は、単なる実用品ではなく、これから百年先を生きる誰かにとっての「文化資産」となりうる存在です。
日本の伝統工芸が持つ圧倒的な技術力、美意識、そして革新性を“記録”し、“証明”し、未来へと“引き継ぐ”ための手立てとして、私たちARTerraceは、テクノロジーの力を借りています。 作品ごとに作家名・制作背景・所有履歴などの情報をブロックチェーン上に記録することで「誰がいつ作り、どのような経緯でここにあるのか」という“作品の来歴”を可視化できます。これにより、工芸作品に対する信頼性が高まり、最終的には資産としての価値が担保されます。
アート市場で繰り返し語られてきた「透明性の重要性」――。 現代アート市場に資産運用助言などを行うTRiCERAの井口泰CEOも、上で引用している日経新聞記事の中で「市場の再活性化には価格や取引の透明性を高めることが重要になる」と述べていますが、これは工芸市場においてもまさに同様だと感じています。
いま私たちが手にしている伝統工芸作品は、未来に受け継がれるべき、日本のかけがえのない“資産”である――そんな視点で、あらためて「伝統工芸」を見つめ直す時間を、皆さまと共有できればと思っています。
*日本経済新聞、2025年7月11日〈金融PLUS〉3メガ、アート市場に注目 インフレで脚光し世界8兆円に 美術品投資、金融サービスと相乗効果1
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