
「金工」作品を未来へつなぐ
〜正しい保管とお手入れナビ〜
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「金工」とは金に限らず、銀・銅・錫など多様な金属を主材料に制作された工芸作品を指します。素材の重厚感と、光を受けて立ち現れる華やかな表情が、多くの愛好家を魅了しています。
お気に入りの作品を長くご愛用いただくために、金工作品の特徴と、おすすめのお手入れ・保管方法についてご紹介します。
金工品は材料となる金属の性質と質感を最大限に引き出すよう作られており、素材をダイレクトに味わえることが魅力です。加熱した金属を「鋳金」「鍛金」技法によって成型し、「彫金」技法で加飾します。
金属は水分や塩分に弱いため、濡れたまま放置すると錆や変色の原因になります。また、金属製の花器をご使用の際は、腐食を防ぐため延命剤の使用はお控えください。
<金>
金は比較的安定した金属ですが、皮脂やハンドクリームなどの油分に触れると、酸化により変色や黒ずみが生じることがあります。 お手入れや収納の際は、あらかじめ手を洗い、油分を落としてから扱うようにしましょう。 専用クロスなど柔らかい布で丁寧に拭き上げることで、表面の汚れを美しく取り除けます。
<銀>
素地が銀の作品は空気中の成分と反応しやすく、黒ずみが出やすい素材です。普段は柔らかい布で軽く乾拭きを。変色が気になるときは、銀専用クリーナーや、重曹と水を混ぜたペーストで優しく磨くと、元の輝きが戻ります。
<錫>
錫は錆びにくい性質を持つ金属で、日常的なご使用にも適した素材です。ただし、時間の経過とともに光沢が落ち着いてくるため、気になる場合は銀製品と同様に重曹ペーストで優しく磨いてみてください。元の艶がよみがえります。
一方で、錫は融点が低いため、直火での加熱は避けてください。湯煎程度であれば問題ありませんが、火災ややけどのリスクがございます。また、レモンや酢など酸性のものを長時間入れておくと変色や腐食を引き起こす場合があります。色味の濃い飲み物も同様に変色の原因となるため、使用後は早めに中身を移し、洗浄・乾拭きを心がけましょう。
<銅・真鍮>
銅製品にまつわる注意点としてよく挙げられるのが「緑青(ろくしょう)」です。十円玉の表面などに見られるこの青緑色の錆は、人体には無害とされていますが、美しい風合いを保つうえでは除去するのが望ましいでしょう。 使用後は水気をしっかり拭き取り、通気性のよい場所で保管することで緑青の発生を防げます。もともと銅は錆に強い金属ですが、こまめな乾拭きがその性質をより引き出します。
また、銅と亜鉛の合金である「黄銅(真鍮)」は、金管楽器などにも用いられる素材です。空気中の成分と反応し黒ずむことがありますが、その場合は柔らかい布で軽く磨くことで輝きを取り戻せます。 一点注意したいのは、ゴム素材と接触したまま保管すると化学反応を起こし腐食する恐れがある点です。ゴム類とは距離をあけて保管してください。
\ARTerraceでは、作家本人によるメンテナンスサービスを提供できる場合がございますので、お気軽にお問い合わせください。/
・日々のお手入れ
インテリアとして飾る場合、定期的に柔らかい布で乾拭きして埃を拭き取っていただくと、美観を損なわずお楽しみいただけます。また、肌にふれるアクセサリーは、汗などの水分が作品に長時間触れたままにならないように、こまめに乾拭きしていただくとよいでしょう。
・ご使用の際は…
金属は水分や塩分に弱いため、濡れたまま放置すると錆や変色の原因になります。 特に、酒器や花器など水を扱う場面では、使用後にすぐ洗って水気を拭き取り、風通しのよい場所でしっかり乾燥させましょう。
急激な温度変化に弱いため、電子レンジ・食洗器オーブン等でのご使用は避けてください。
・保管の際は…
高温多湿の場所、直射日光を避けてください。
定期的なお手入れと正しい保管方法を実践することで、作品本来の美しい姿で次の世代へバトンタッチ。今日から始める小さな心がけが、未来への贈り物となります。