
「伝統工芸」とは
「伝統工芸」という言葉は、耳にする機会が多いものの、正面から説明しようとすると意外に難しいのではないでしょうか。
日本工芸会*に所属する作家による作品、あるいは「日本伝統工芸展」に出品された作品が「伝統工芸」と呼ばれます(ARTerraceでは日本工芸会所属作家の作品のみを取り扱っています)。
伝統工芸は、1300年以上にわたり受け継がれてきた日本固有の技術と美意識を背景に持ちます。これは単なる過去の継承ではなく文化の核心をなす営為といえるでしょう。
興味深いのは、「伝統」や「工芸」という語が、ともに翻訳語である点です。これらは明治期以降、西洋思想を受容する過程で日本の思想家や文人たちが練り上げた概念であり、「単なる過去の遺産ではなく未来をも支配する力」としての「伝統」観に裏打ちされています。実際に、歴代の人間国宝も「伝統の殻に閉じこもることなく、伝統の良さを再発見し、そこに現代性を与えて創造していくことが伝統工芸の進むべき道」と語っています。
*
伝統工芸のもう一つの本質的特徴に、「実用性」が挙げられます。
日本美術は、使って美を楽しむという性質を持っています。西洋近代の芸術学は芸術の純粋性や自律性を主張するものですが、日本の芸術は長らく日常の中で生きるものでした。たとえば絵画は、床の間に掛けられ四季折々の行事に応じて取り替えられるもの。空間そのものと調和しながら、環境全体を美しく整える「道具」として機能してきました。
日本美術は「生活芸術」として発展し、花器、茶道具、着物など、日々の暮らしの中で人と関わり続けてきたのです。
伝統工芸もまた、用途や場所、そして使い手の存在を想定してつくられます。つくり手は、使い手の幸福を願い、手を尽くして作品を仕上げます。使い手はその作品を通じて、つくり手の想いに触れる——そこには、一種の穏やかなインタラクティブ性があるのです。「使って愉しむ」ことで完成する芸術。それが、伝統工芸の世界です。
⁑
時代が進み、流通と所有のかたちは大きく変わりました。オンラインで作品が出会い、遠く離れた土地から購入されるということも、もはや特別ではありません。
このような時代において、「本物」であること、「誰がつくったのか」、「どのような経緯で自分の手元に届いたのか」という情報は、これまで以上に重要な意味を持つようになりました。
そこで、ARTerraceでは、<NFT(非代替性トークン)>という技術を活用しています。
NFTとは、ブロックチェーン上に記録される「唯一無二のデジタル証明書」のようなもの。作品と紐づけることで、その作家が制作した「本物」であることを証明すると同時に、いつ、誰の手に渡ったかという履歴を、透明性をもって記録することができます。
たとえば、人間国宝が作ったある一点ものの茶碗。作品に対し、作家情報・作品の写真・技法・流通履歴などをブロックチェーンに記録することで、未来永劫その「物語」が失われることなく、受け継がれていきます。
デジタル技術と伝統文化。この一見相反するものの出会いは、実は非常に親和性の高い組み合わせです。なぜなら、どちらも「真正性」や「継承」に深く関わっているからです。
目に見えない価値、時を超えて伝えるべき物語——それらを、テクノロジーの力を借りて確かに残していく。
ARTerraceが取り組むこの試みも、また一つの「新たな伝統のかたち」なのかもしれません。
「本物を持つ」意味を、実際の作品から感じてみませんか?
[作家を見る]
[作品を見る]