
「漆芸」作品を未来へつなぐ
〜正しい保管とお手入れナビ〜
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漆芸は古くから食器やアクセサリーとして親しまれてきた、日本人にとって馴染み深い工芸の一種です。漆は食器としても用いられる通り水や油脂に強く、適切に保管すれば特にメンテナンスをせずとも、美しい姿のまま永く使用することが可能です。
お気に入りの作品を長くご愛用いただくために、漆芸品の特徴と、おすすめのお手入れ・保管方法についてご紹介します。
漆は保護剤の役割を果たすほど耐久性に優れた素材ですが、経年劣化により塗膜が削れて薄くなったり、加飾部が剥離したりすることがあります。
漆器の劣化には、表面の塗膜が損傷を受けた場合と、漆の中の素地が変形している場合の、主に2通りに分けられます。
1. 素地が木材の作品は乾燥が大敵です。エアコン付近や冷蔵庫内に長時間放置しておくと、木地の伸縮により塗膜がひび割れてしまうことがあります。
2. 紫外線により退色・変色が起こり、 美しさが損なわれます。窓辺など直射日光の当たる場所や蛍光灯の光が当たる場所での保管はお避けください。
また、塗り直しや修復は専門業者にご依頼いただくことをおすすめします。
\ARTerraceでは、作家本人によるメンテナンスサービスを提供できる場合がございますので、お気軽にお問い合わせください。/
・日々のお手入れについて
インテリアとして飾る場合、定期的に柔らかい布で乾拭きして埃を拭き取っていただくと、美観を損なわずお楽しみいただけます。また、肌にふれるアクセサリーは、汗などの水分が作品に長時間触れたままにならないように、こまめに乾拭きしていただくとよいでしょう。
・使用の際は…
急激な温度変化に弱いため、電子レンジ・食洗器オーブン等でのご使用は避けてください。また、直火の近くでのご使用や、煮えたぎるほど熱い物を入れることはお控えください。
・保管の際は…
基本的には付属の共箱または扉付きの食器棚に保管してください。 食器棚に保管する場合、長期間使用しない際は柔らかい布に包んでおくと安心です。定期的に使用していただく場合は他のお茶碗やお椀に重ねて収納してもかまいません。
・螺鈿装飾がある作品
加飾部分の剥落を防ぐため、急な温度変化を与えないようにしましょう。特に火の近くでは、土台の漆膜だけでなく接着剤の膠や樹脂が変性し、貝装飾が剥落する恐れがあります。
・沈金装飾がある作品
急激な温度変化や、強い力を与えないようご注意ください。漆を接着材として金粉や金箔を埋め込むため、温度変化によって金箔が剥離したり、強い摩擦により金粉装飾が削れてしまうことがございます。
定期的なお手入れと正しい保管方法を実践することで、漆芸作品の美しい姿を保ったまま次の世代へバトンタッチできます。
今日から始める小さな心がけが、未来への贈り物となります。