漆芸とは |
漆芸の制作工程 |
①形を作る
椀・箱・皿・盆などにはおもに木を素材に使います。また、竹を編んで形を作ったり、型に麻布や和紙をはって形を作る技法もあります。そのほか、動物の皮や金属、陶磁も使います。
②漆を塗る
作品の素材に漆を塗ることを〔髹漆(きゅうしつ)〕といいます。ヘラや刷毛を使って漆を塗る作業のことです。漆を塗っては研ぐことを何度もくり返すことにより、美しい肌合いの表面ができあがります。
1. 下地
①木地:木を削ってお椀の形をつくります
②木地固め:木地を強くするために全体に生漆を塗ります
③布着せ:さらに丈夫にするために麻布を漆で貼り付けます
④下地付け:ヘラや刷毛を使い生漆と土を混ぜた下地をつけます。乾いたら研ぐ作業を何回もくり返します。
2.中塗り
下地作業の後に上質の液を塗って研ぐことを数回くり返し肌を整えます。
3.上塗り
最後に上塗漆という上質な漆を和紙でよく濾して、ゴミがつかないよう注意しながら塗ります。塗立て(塗ったまま)にする場合と呂色(みがいたもの)の場合の、二通りの仕上げ方があります。
技法紹介 |
蒔絵は日本独自に発達した漆芸の代表的な技法で1200年ほど前から行われています。器の表面に細い筆を使って漆で絵を描き、その漆が固まらないうちに上から金の粉を蒔きつけて模様をあらわします。蒔いて絵にするという意味から蒔絵といいます。研出蒔絵、平蒔絵、高蒔絵などのつくりかたがあります。
螺鈿はアワビや夜光貝、白蝶貝などの貝がらの輝いた部分を薄くして使います。「螺」は巻き貝をさし、「鈿」にはかざるという意味があります。蝶鈿は、1300年ほど前に中国大隆から伝わった技法で正倉院の宝物にも見ることができます。
塗り上がった漆面に、のみや刀(とう)と呼ばれる刃物で模様を線や点で彫ります。彫ったみぞに金箔や細かい金粉をすりこむので、細くて繊細な模様が表現できます。600年ほど前に中国大陸から伝わった技法です。
模様の彫り方は、線で彫る、点で彫る、またはそれらを組み合わせた彫り方の大きく3種類があり、蒟醤剣という特殊な彫刻刀を使います。
もともとは線で彫る方法のみでしたが、いろいろな色漆と彫り方との組み合わせにより、複雑な模様も表現できるようになりました。蒟醤は昔東南アジアから伝わったとされる技法です。
素地に色漆を何十回も塗り重ねて厚い漆の層をつくります。その層に、彫刻刀で彫り込んで模様を表現する技法を彫漆といいます。800年ほど前に中国から伝わった技法です。
金や銀などの金属を、薄い板にのばしてからいろいろな形に切りぬいて模様をつける技法を平文と呼びます。
漆で模様を描いた上に、細かく割った卵の殻を置いて表現する方法です。色漆では出すことが難しい白色を鮮やかに表すことができます。おもにウズラの卵を使用します。
色漆を使って絵を描く表現が漆絵です。最も古い時代に生まれた基本的な装飾表現です。
栄地に模様を浮さ駆りし、その後塗りを重ねる技法です。同様の技法は日本各地に伝わっています。
竹は編んで形をつくるのに適しています。竹を細く割り表側の皮をはがして漆を塗り重ねます。竹でつくったものは軽くて丈夫なのが特徴です。
ねんどで形をつくり、その形を石こうで型にします。型に麻布を必要とする厚さに漆ではり重ねて、型からはずして形をつくります。その後、さらに漆を塗って仕上げます。麻の繊維は漆がしみこむと強くなるので、丈夫で自由な形をつくるのに適しています。
<出典:『伝統工芸ってなに?』日本工芸会東日本支部編/芸艸堂刊 P28~37>