静かに舞い落ちる木の葉の様子に、目を奪われる季節となりました。かつて生き生きとしていた緑の葉は、今や黄土色や褐色に変わり、大地に繊細な模様を描いています。「もののあはれ」が漂うこの光景に心を寄せると、移ろう世の美しさと、生命の儚さが胸に迫ります。
日本人は平安時代の頃から、落ち葉のような黄褐色を「朽葉色(くちばいろ)」として衣服に取り入れ、その深い趣を愛でてきました。朽葉色を基調とした派生色は「朽葉四十八色」と呼ばれ、四季の移ろいや葉の種類によって微妙な色の違いが生まれています。
さて、このような自然由来の色彩を愛する日本人の感性は、陶芸作品にも色濃く反映されています。陶芸に使われる粘土は、古くから地域ごとの土が用いられ、その土地の個性を作品に宿らせてきました。粘土を成形し、窯で焼成した後の焼き上がりは、硬さや手触り、色の変化など、土地ごとに個性を発揮します。
たとえば、古墳時代から続く備前焼は、釉薬を一切使わずに焼き締めるのが特徴です。地中に掘った傾斜のある穴窯で高温で焼成することで、土そのものの味わいを感じられる、唯一無二の作品が生まれます。また、佐渡島で作られる「無名異焼」は、佐渡金山の鉱脈近くから採れる酸化鉄を豊富に含んだ赤土を使用しています。独特の磨き方によって表面を滑らかに仕上げ、素材本来の鮮やかな赤い色と光沢を引き出しています。
このように、地域ごとの土の特性を生かした技法の発展が、日本の陶芸の奥深さを支えています。ぜひ、今回ご紹介する「備前焼」と「無名異焼」の作品を通じて、自然が生み出す色彩の美しさを感じてみませんか?