心地よい風が頬をなで、木々の葉が徐々に赤や黄色に色づき始めました。「天高く馬肥ゆる秋」とも言われるように、多くの作物がたわわに実をつけるこの季節は、人々も動物も収穫の喜びに溢れています。
日本最古の和歌集「万葉集」を季節ごとに分類すると、秋を詠んだ歌が最も多いとされています。中でも、秋の七草の一つである「萩」を題材にした歌は140首以上にのぼり、万葉集における登場回数は松や梅を抑えて最も多い植物です。赤紫や白の小さな花をつけ、風に揺れる姿は非常に繊細で優美であり、古くから貴族たちの庭に観賞用として植えられていました。
また、萩は鹿や猪など様々な動物との取り合わせで古くから和歌や芸術作品に多く登場してきました。これらの動物は一年中見られますが、特に秋に題材とされることが多いのは、実りの秋に食糧を蓄えるため行動が活発になり、人里に姿を現す機会が増えるからだと考えられます。豊かな自然の恵みと共に、動物たちの姿が秋の風情を一層際立たせ、人々の心に深く残る情景が描かれてきたのでしょう。
ここで、秋の動植物を題材にした作品をいくつかご紹介します。時代を重ねるごとに、秋を彩る動植物の種類はますます増え、工芸品にもその多彩な表現が反映されています。秋の深まりとともに、古来より日本人が愛した実りの秋を、心ゆくまで感じてみませんか。