10月特集 〜 秋を愛でる伝統工芸品  吹墨ぐい呑み、濁手マグ、蒔絵螺鈿の菓子器など〜

秋の動植物を題材にしたぐい吞、蒟醤箱、蒔絵螺鈿の施された菓子器などをご紹介します。

ARTerrace 10月特集コラム 秋を愛でる

 

 心地よい風が頬をなで、木々の葉が徐々に赤や黄色に色づき始めました。「天高く馬肥ゆる秋」とも言われるように、多くの作物がたわわに実をつけるこの季節は、人々も動物も収穫の喜びに溢れています。

日本最古の和歌集「万葉集」を季節ごとに分類すると、秋を詠んだ歌が最も多いとされています。中でも、秋の七草の一つである「萩」を題材にした歌は140首以上にのぼり、万葉集における登場回数は松や梅を抑えて最も多い植物です。赤紫や白の小さな花をつけ、風に揺れる姿は非常に繊細で優美であり、古くから貴族たちの庭に観賞用として植えられていました。

また、萩は鹿や猪など様々な動物との取り合わせで古くから和歌や芸術作品に多く登場してきました。これらの動物は一年中見られますが、特に秋に題材とされることが多いのは、実りの秋に食糧を蓄えるため行動が活発になり、人里に姿を現す機会が増えるからだと考えられます。豊かな自然の恵みと共に、動物たちの姿が秋の風情を一層際立たせ、人々の心に深く残る情景が描かれてきたのでしょう。

ここで、秋の動植物を題材にした作品をいくつかご紹介します。時代を重ねるごとに、秋を彩る動植物の種類はますます増え、工芸品にもその多彩な表現が反映されています。秋の深まりとともに、古来より日本人が愛した実りの秋を、心ゆくまで感じてみませんか。

 

色絵吹墨墨はじき萩文ぐい吞(十四代 今泉 今右衛門)

吹墨のブルーに、萩がデザインされたぐい呑です。

 

▼籃胎蒟醤箱 秋の野(大谷 早人) 

~大谷 早人先生からみなさまへ~
籃胎という軽く丈夫な素地、その上に香川の伝統技法である蒟醤技法で秋の野に咲きほこるコスモスと軽やかに飛ぶ蝶を色彩豊かに表現しました。
 
 
~十五代 酒井田 柿右衛門先生からみなさまへ~
乳白色の素地に赤絵(色絵)を施す「濁手」と呼ばれる伝統的な技法を用いて制作しています。
 

蒔絵螺鈿菓子器「秋実」(栗鼠)(室瀬 和美) 

~室瀬 和美先生からみなさまへ~
秋の実りの季節に遊ぶ小動物を表現しています。「美」を表現する中に、それを受ける相手の人が存在することを常に意識して作品を制作しています。