5月特集 〜初夏を味わう伝統工芸品 切子、釉裏金彩、金胎蒟醤、牡丹〜

繊細にきらめくガラス切子、漆芸の装飾を凝らした蒟醤(きんま)箱、牡丹の花をモチーフにした裏金彩牡の飾皿など、初夏にぴったりな作品をご紹介します。

5月は春から初夏に移り変わり、爽やかな気候と草花たちの活力が感じられる季節です。
新緑を思わせる色合いの工芸品や、この時期に花開く牡丹をモチーフにした器は、日常生活に季節感を添えます。

日本人と「緑」

「みどり」という言葉は、もともと「瑞々しさ」を表すためのものでした。
古代の日本では顔料の種類が少なかったため赤・青・白・黒の4色しか分類されておらず、緑色も「青」の中の一種として表現されていました。現代でも「青りんご」「青虫」など、緑のものを青と表現する名残があります。
平安時代になると、「新芽」や「若芽」の若々しさを表すために用いられていた「みどり」が、そのまま色彩としての「緑」も示すようになりました。平安の装束では「若草色」「浅緑色」「柳色」など多様な緑色が使用されており、名称も細かく分類されています。これは、平安貴族が暦の変わり目によって季節に合う色や柄の衣服に衣替えする「かさね色目」の文化によるものです。日本人が古くから身の回りのものによって季節感を表現していたことが分かります。

ここで、季節を感じられる「緑」を用いた作品をいくつかご紹介します。

 

硝子切子鉢「翠泉」(氣賀澤 雅人)

こちらの作品は竹細工の編み込み模様をヒントに制作されています。

 

蒟醤箱「静閑」(北岡 道代)

静かな水辺で凛とたたずむ鷺を表現しています。鷺は、春から夏にかけて日本に渡来する渡り鳥です。

 

蒟醤箱「静閑」(北岡 道代)、硝子切子鉢「翠泉」

 

百花の王「牡丹」

牡丹は唐の時代から中国で愛好され、その花の豪華さから「百華王」「花王」と称されてきました。日本にははじめ薬草として伝来したといわれていますが、平安時代には観賞用としても貴族たちの間で珍重され、牡丹の登場する和歌も数多く遺されています。
牡丹の「丹」は不老・不死の仙薬を意味することから、不老不死、不老長寿という意味も持っており、縁起物として屏風や着物の柄によく描かれてきました。

工芸品においても牡丹はモチーフにされることが多く、ARTerraceでも牡丹を表した作品を多数取り扱っています。

 

釉裏金彩牡丹唐草瑞鳥文 飾皿 (吉田 美統)

天平時代の頃から伝わる「牡丹唐草模様」が用いられています。
長寿・繁栄の意味を持つ吉祥模様で、日本においては正倉院宝物中にこの文様の遺例が残っています。この牡丹唐草文様を縁に、中央に鳳凰の図柄を配しています。


金胎蒟醤花器「露華」(藪内 江美)

牡丹の蕾に夜露が光る様子をイメージし制作され、花開こうと力を蓄えた生命力を表現しています。


乾漆赤抜ぼたんの器(奥窪 聖美)

石膏型に漆で麻布を貼り重ねて厚みを作ってから、型から抜き出す脱乾漆で自由な造形をしています。咲きほこる花を器に見立て、赤い布目部分を蒔絵や黒塗り部分と高さを合わせるように工夫されています。


染付彫四方鉢「花の王」(本多 亜弥)

白牡丹の気高い美しさ、優雅さが細やかな彫りと染付で表現されています。

 

釉裏金彩牡丹唐草瑞鳥文 飾皿 (吉田 美統)  天平時代の頃から伝わる「牡丹唐草模様」が用いられています。 長寿・繁栄の意味を持つ吉祥模様で、日本においては正倉院宝物中にこの文様の遺例が残っています。この牡丹唐草文様を縁に、中央に鳳凰の図柄を配しています。   金胎蒟醤花器「露華」(藪内 江美)   牡丹の蕾に夜露が光る様子をイメージし制作され、花開こうと力を蓄えた生命力を表現しています。   乾漆赤抜ぼたんの器(奥窪 聖美)  石膏型に漆で麻布を貼り重ねて厚みを作ってから、型から抜き出す脱乾漆で自由な造形をしています。咲きほこる花を器に見立て、赤い布目部分を蒔絵や黒塗り部分と高さを合わせるように工夫されています。   染付彫四方鉢「花の王」(本多 亜弥)  白牡丹の気高い美しさ、優雅さが細やかな彫りと染付で表現されています。